書評#17『三千円の使いかた』

書評

はじめに

 久しぶりに書評を書きます。書こう書こうと思っていましたが本を読んでも書評を書くのがなかなか億劫でさぼっていました。

 このままではいけないな、もったいないなという思いで再開します。

 このブログの書評は「堅苦しくない」ことで有名です。

 何かの参考になれば幸いです。

『三千円の使いかた』

 書評第17冊目に選んだのは原田ひ香さんの小説『三千円の使いかた』です。

 どんな小説なのかというと、お金に関する小説です。

 ーーー人は三千円の使い方で人生が決まるよ、と祖母は言った。
 で始まるこの小説は御厨(みくりや)家の住民それぞれが抱えたお金との付き合い方をそれぞれの視点で描いた物語となっています。

 祖母琴子(七十三歳)が抱える問題、専業主婦である真帆(二十九歳)が抱える問題、その妹の会社員の美帆(二十四歳)が抱える問題、母、智子(五十五歳)が抱える問題、それぞれがそれぞれの事情でお金のことで悩みます。

 こういう本は珍しいんじゃないかなと思いました。

 世の中にはお金に関する本はたくさん出回っています。お金に関する基本的なことを学べる本から投資本まで、たくさんあります。
 そんな中、小説でお金のことにリアルに触れるというこの本は珍しいものだと思います。

 小説で思い出すのは『フリーター、家を買う。』(有川浩・著)や『億男』(川村元気・著)などを思い出しますが、それとはまた違った面白みがこの小説にはあります。

 わたし自身がお金との付き合い方が苦手なのでこの小説を読んだあとじっくりと考えにふけってしまいました。

書評

 総合評価:☆☆☆☆
 読みやすさ:☆☆☆☆☆
 勉強が出来る:☆☆☆
 記憶に残った:☆☆
 実践的である:☆☆☆
 感動する:☆
(MAX:☆☆☆☆☆)

 です。

 まず「読みやすさ」ですが星5です。非常に読みやすかった。

 次に「勉強が出来る」度ですが星3です。たとえば実用書などにくらべると具体的な方法などは書いていないのですが、物語を通じて「お金というもの」について学ぶことができます。

「記憶に残った」かどうかは正直なところよくわかりません。1年後はすっかり忘れてしまうかもしれませんがただなんというか「印象的」ではありました。

 おばあちゃんにはおばあちゃんの金銭的悩みがあり、主婦には主婦の悩みがあるのだなとか、こうリアルな人間の生活模様が描かれているのが印象的でした。そこは記憶に残ると思います。

「実践的である」は星3です。

 実用書ではないので具体的なお金の増やし方とか守り方のようなことは書いてありません。(ストーリーの中にはあります)。ですが、お金に対しての接し方みたいなものを身につけることができればそれは実践的なのではないかなと思いました。

 冒頭にあった「人は三千円の使い方で人生が決まるよ」というのは名言だと思います。

 三千円というところがなんとも具体的です。

 お金を切り詰めれば「一円の価値」というものも重視しなければなりませんが、一円でも一万円でもなく三千円というところがポイントです。安くはないが、高くもない、微妙なラインです。

 三千円あれば夕食の買い出しでまともなものをいくつか買うことができます。
 三千円あればスパやサウナに行くことだってできます。
 三千円あればちょっと高級なプラモデルを買うことができます。
 三千円あればマッサージのようなものも受けることができます。
 三千円あれば本が2冊から6冊程度買うことができます。
 三千円あれば友だちとちょっとおしゃれなランチに行くことができます。

 三千円あればある程度のことができます。ですが一万円ほど高くはない。

 一万円だと少し買い物に悩んでしまうことも、三千円だったら買ってしまうことってなんだかありそうです。

 三千円という数字がとても日常にフィットした数字です。

 そして、誰かの言葉のように、習慣というものが人生を作るのなら、その三千円の使い方というのはやはり人生を決める重要な決断なような気がしてきます。

 お金に関してもっと意識を払うことができるようになる、という意味で実践的だなと思いました。

 最後に「感動する」ですが、星1です。

 特に感動するような要素はありません。(なくはないですが)

 小説がまるで人の日常を覗き見ているかのようにとてもリアルな日常なんです。

 なので、こう感動を与えるような作品ではないけれど、だからといって面白くないというわけではありません。

 面白いです。

 リアルな日常だからこそ、切実さが伝わってきて、自分のことについても考えてしまう。

 そういうところがあります。

 以上のことを踏まえて、総合評価は星4です。

まとめ

 久しぶりに書評を書いたのでなんとなくこう筆が重い。

 思っていることはたくさんあるのに、それがなかなか伝えることができないのがもどかしいところであります。

 小説『三千円の使いかた』は面白い小説です。

 読んでみて損はない本だと思います。

 なお、この本は定価700円です。
(すみません、わたしはブックオフで100円で買いました)

 

 

 

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