焦がれてる

雑文

 今日はあまり時間がないので短めにします。

 15日目。

 今日は、僕がレストランでアルバイトを始めて15日目になります。

 お冷の提供、料理の提供、バッシング、レジはそこそこ慣れてきて、いまはオーダーを受ける練習をしています。

 平日のランチですが何が起こるか分かりません。

 お店に入る前はいつも神様に祈っています。

「どうか無事に過ごせますように」
「どうか何も言われませんように」
「どうか忙しくなりませんように」

 出勤してご予約を確認すると、2件ありました。

 少ないです。

 穏やかだといいなと願いながら開店を迎えました。

 一件だけご注文を取りに行くことができましたが、そのあとは行くことが出来ませんでした。

 体を止めている時間なんてなかったほどです。

 次々とお客様が来られ、気が付けば満席近くになっていました。

 忙しい。

 そんななか僕はメインの料理と一緒に持っていくパンを忘れてしまい注意されてしまいました。

 伝票にマークが記されている筈だったのですが、見落としてしまったのです。

 普段起こさないようなミスをしてしまいました。

 まるで赤信号を見ているのに認識出来なくてそのまま突進してしまったような気分です。

 そこからまたバタバタします。

 それでも2時頃には落ち着いて来ました。

 今日は晴美さんからは何も注意されていません。

 2時15分頃に晴美さんが休憩に入ります。

 そうなれば、張っていた気も緩めることが出来ます。

 晴美さんが休憩に入るところで、声を掛けられました。

「これいっぱいになってるのに洗いに出さないのしょうちゃん?」

 しまった! と思ったときにはもう遅い。

「はい。すみません」

 グラス類をまとめているラックがいっぱいになったら洗いに出すことは知っていましたがいままでやったことがなかったのでタイミングを見つけられずにいました。

 結局、今日も注意されてしまった。

 でもそのあとは平穏な時間を過ごせました。

 3時15分に上がる。

 そのあとは、「もみ」の仕事です。

 とりあえず今日の心配事はなくなった。あとは慣れている仕事だ。

「もみ屋」さんへ向かいます。

 控え室へ入ると、山田さんとフクさんがいました。

「おはようございます」
「おつかれー」

 今日はどうだった? と聞かれたので、忙しかった、また怒られてしまった、と答えた。

 制服に着替える。

 予約表を見ると、スカスカだった。

「暇だよー」と山田さんが言った。

 僕はいつもの場所に座る。

 入っても入らなくてもとりあえずのんびりしたい、と僕は思っていた。

 結局、入ることなくTwitterを見たり本を読んだりして過ごした。

 5時半に上がる。

「終わったー」

 車に乗り込み、コンビニに向かう。

 頭の中で、何度もシミュレーションをしていた。

 今日こそ言おう、と、僕は意気込んでいた。

 なんだか、我慢が出来ない。進展が欲しい。

 駐車場へ着き、車の量を確認する。2台止まっていた。

「よし、行こう」拳を握り、コンビニに入る。

 入る前に、レジに居る「黒髪」に気づいた。

 入ろうとしていたコンビニには入らず、一旦車に戻った。

 居ない……。

 だけど念のためと、少し時間を稼ぐことにした。煙草を吸う。

 ぼんやりと薄暮の空を眺めながら日曜日は居た、月曜日も居た、だけど水曜日は居ない、ということに思いを巡らせていた。

 仕方がない。煙草を吸い終えて店内に入った。

 確認してみたけれど、やっぱり居ない。休みなのだ。

 いま、どうして居るのだろう。もしかして彼氏なんかが居て、デートしているのかな、なんて、考えたくないことを考えた。

 いつも買う100円の缶コーヒーを手にしてレジに向かった。

 そこには笹原さんは居なくて、よく見る若い別の女の子が居た。

 この子も、可愛いが、惹かれない。

 笹原さんのくっきりとした双眸を思い浮かべた。うしろに一括りにした明るい髪の毛を思い浮かべた。

 そんなことばかり考えている俺はちょっと気持ち悪いかもしれないななんてことを思った。

 お会計をし、コンビニを出た。

 帰り道、やっぱり僕は笹原さんのことを考えていた。

 見えない未来。だけど一年後には思い返す過去。

 その過去は、実りあるものなのだろうか。

 見えないもどかしさが歯がゆかった。

「君が見えなくて、見えなくて、何度も呼びかけるよ、この夜に迷ってしまう」と、ラルクアンシエルの歌を歌ってみたりした。

 明日、居残りしよう、と、決めた。

 仕事は4時までだが、その時間には笹原さんは居ない。

 日曜以外は5時、あるいは5時半以降でなければ笹原さんは居ない。

 だから、明日、その時間まで待ってみよう。

 こんな気持ちになったのは初めてだ。

「焦がれている」と、僕は思った。

 

 

 

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