仕事中考えていた。
あの、朝の女の子は誰なのか。
わたしは今年で40になるおじさんである。
接客業をしているので、お客さんからは「お兄さん」と言われるけれど、間違いなく「おじさん」である。
レストランで、給仕をしながらわたしは考えていた。
「あの子は誰で、何者だったのだろうか」と。
朝、わたしはアパートにいた。
眠れなくて、ワインを飲んでいた。
たしか、ゲームで『ゼルダの伝説』をやって時間をつぶしていた。
そんなとき、女の子がやってきた。
「撮影会しようよ」と言ってきた。
女の子は一回全裸になってから、セーラー服のパジャマに身をつつんだ。
ブラジャーはしているが、下は履いていない。
「ね、撮ろ」
わたしはシャッターを押す。
足、細いなと思った。
写真を撮って、スマホの画面を彼女は眺めた。
「あ、これはヤダ。もいっかい」
そういってまた撮影する。
なんだかゲームの「祠」を攻略するのも面倒になったので撮影を続けることにした。
撮る。
確認する。
いいか悪いか判断する。
悪いものは消して、「いい」と思ったものは残す。
「おっぱい意外におっきいな」とわたしは思った。
また、壁際に立ってもらい、わたしはシャッターを押す。
ぱしゃ。
なんでベルトをしているのかというと、服が「だぼる」からであった。
できることなら「腰は引き締めたい」と、「女の子」は言う。
「何をやっているんだろう」というようなことは思わなかった。
ただ夢中に「女の子」を撮っていた。
「かわいさ」を、そのときわたしは求めていた。
最後の一枚を撮る。
「これでいい?」
「いい」
「なんで股間に手を当ててるの?」
「さみしいから」「だと、思う」
「ふうん」
それにしてもいいおっぱいをしているなとわたしは思った。
それで、撮影会は終了である。
女の子は、「じゃあね」と言って去っていった。
何だったのだろう、いまの出来事は、と思いはしたけれど、
わたしはワインを飲んでいたのであんまり深くは考えなかった。
仕事に行く時間も近づいていたので、寝ることにした。
おっぱいと、セーラー服と、細い脚と、長い髪。
股間にあてた手のことを考えていた。
少し寝て、
時間になれば支度をする。
支度をして、仕事に行く。ひとりだ。
そして、お店を開店させ、
わたしは、接客をする。
「あの女の子は何だったんだ」
やっぱりわたしはそう思った。
あれは、誰なんだろう。
わたしにはわからない。
だってあれは、「わたしなのだから」
わたし、だったのだ。あの女の子は。
意味、わかる?
わたしだったのだ。
わたしは、自我が崩壊してしまう気がした。
もう病院には戻りたくないとも思った。
わたしには、わたしが、わからない。
誰も、答えてなど、くれない。
誰か、答えてよ。
「あの女の子のことを、わたしは知らない」
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