器、性別についてのこと、その他

エッセイ

「女は強い」

 そんなことを、おばさんは言っていた。

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 わたしはレストランで働いている。

 お客さんの声を聞いた。

 テーブルには5人のおばさんがいて、そのなかのひとりが、「女は強い」と、手をグーにして語っていた。

 もちろんそのおばさんは「女だ」

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「女は強い」その言葉に変な違和感を覚えた。

 よく聞く言葉である。

 例えば、「母は強し」みたいのと一緒だ。

 その意味は、納得できるし、わかる。

 だけど、男は、「男は強い」なんてことを言わない。

 そこが、違和感だった。

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 どういうことなのかを説明するのは難しい。

 歴史の話になるし、文化人類学の話になる。

 生物学の話にもなる。

 非常に枝分かれした話になってしまうのでこの記事ひとつで語られるものではない。

 あとたぶん、こういうことは、「女」は考えないだろうな、と、思った。

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 ひとつの写真を見てほしい。

 この写真だ。

 この写真をみて、あなたはどう思っただろうか。

 わたしはこの写真をじっと眺めてみて、「なんか孤独そうだな」と感じだ。

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 これは、「わたし」である。

 わたしは、昭和58年生まれの、今年40になる男だ。

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 「女の子になりたかった」とか、ゲイだとか、性同一性障害とかではない。

 性別もセクシャリティも男である。

 ただなんか、普通の男たちとは違うな、と小さなころから感じてはいた。

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「どうしてみんな、そんなに『普通』でいられるのだろう」

 いつもそう思う。

「普通」ということの定義は難しいけれど、

 普通の「男」は世にたくさんいる。

 サザエさんに出てくるマスオさんみたいな普通の男だ。

 あるいは、「湘南の風」みたいなギャル男にしても、

 ヤンキーにしろ、やくざにしろ、政治家にしろ、サラリーマンにしろ、八百屋さんにしろ、

 世の中の普通の「男」たちは本当にちゃんと「普通」をしている。

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 自分が「男」であることに、何の疑問も持たないし、

 普通に「女」とセックスしたいとか思って、恋をしたり風俗に行ったりしている。

 着ているものも、メンズである。

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 まあ、

 こんなことはしないだろう。

 それは、当たり前のことだ。

 変な話、わたしの親父がこんなことをしていたらわたしは「いや」である。

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 それは息子としての、勝手な願望なのだが、親父は偉大な「男」であってほしい。

 そんな思いがある。

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 まさか女装趣味の男だったなんて、幻滅である。

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 どうしてそんなことを「自分」はしているのだろう。

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 不思議だ。

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 もう一度言うけど、わたしは「男」で、セクシャリティ(性的指向)も男だ。

 だけど、「変身」をする。

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 なぜだろう、と考えてみた。

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 たぶんきっと、それは、「考えたい」からだ。

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 わたしは大学のゼミでジェンダー論を学んだ。

 社会的性差のことである。

 社会的性差のことおよび、「性別」とは何なのかとかいう哲学的なこともわたしのテーマである。

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 先日、タレントのりゅうちぇるさんが亡くなった。

 たしか27歳。

 早すぎる死だ。

 自殺という報道だった。

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 彼、あるいは彼女。いや、彼、だな。

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 彼を死においやった本当の理由はわからない。

 ただわたしが勝手に思っているのは、そこに「性別の苦悩」があったのではないかと、結論づける。

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 彼の人生については他で知ることができるので書かないけれど、なんていうか、たぶんきっと彼は、「息子」のことを想ったのではないかなとか考える。

 他にもいろいろあっただろう。

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 彼と直接会ったわけではないし、深くは知らないけれど、あくまで勝手な憶測だけれども、

 彼は優しい性格の持ち主だ。

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 結婚したのに、離婚した。

 だけど、相手のことを想っている。

 離婚したことの理由は自分本位なものではなく、「相手」や、「子ども」のことを想ってのことではないかと思う。

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 憶測なので、なんとも言えないけれど、わたしはそう思っている。

 りゅうちぇるさんが自ら命を絶ってしまったことは、とても悲しい。

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 みんな、なんでそんな風に普通に「男」と「女」を演じられるんだろうね。

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 わたしにはわからない。

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 だけど、「男」も「女」もなかったら、この世界は成り立たないのかもしれない。

 それは、わたしの哲学の話になってしまうので、長くなるので割愛するが、そういうことだ。

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『らんま1/2』みたいに、熱湯をかぶったら性別が入れ変わるみたいな能力があったらちょっとは気が晴れるのになあって思ったりする。

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 だけどきっと、これは「さだめ」なのだろう。

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 運命というものだ。

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 あなたも、そう。

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 あなたが、「女」であれ、「男」であれ、それは、「運命」なのだ。

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 その「目」で、世界を見て、「何かをなす」ことが、あなたに与えられた「使命」なのだ。

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 ああ、ちょっと、セックスがしたいな。

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 水素原子が、酸素原子と結合したいように、

 ネジが、ネジ穴に差し込むように、

 鍵穴に、鍵を指して、扉が開くように、

 わたしはセックスがしたい。

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 どうでもいいが、この刀は「燭台切光忠」

 伊達政宗が家臣を斬った際に燭台まで切れたということが由来の刀である。

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 この刀で、この世も斬れるだろうか。

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 わたしに、そんな力などない。

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