恋愛の格差

エッセイ

『恋愛の格差』というエッセイを読んだことがある。

 村上龍で、たしか、「経済的に自立していない人間は恋愛ができない」みたいなことをいっていた。

ー----------

 『山田くんとLv999の恋をする』というアニメを観た。

 なんとなく、暇だったので、見てみた。

 ざっくばらんにいうと、「ほのぼの」とした物語だった。

ー--------

 泣くこともなかったし、深い感動もない。

 ただちょっと、「人の恋愛模様」を見ているだけだった。

ー--------------

 恋愛。

 ここしばらく、恋愛なんてしていない。

ー----

 誰かを好きになることなんて、ない。

 出会いさえ、ない。

ー------------

「恋愛したーい」っていうOLの気持ち、なんかわかる気がする。

ー----------

 わたしも恋愛がしたい。

ー--------------

 なんだろう、な。

ー----------

 恋愛って、うれしいこともあるけれど、傷つくこともある。

ー---------

 わたしはどこか、「傷つくこと」を求めていて、そのために「恋愛」しようと思ってたふしもある。

ー-----------

 18、19歳のころだったか。

 なんか、「ふられてみたいな」と思って、気になる女の子に声をかけては「好きです付き合ってください」みたいなことを言ってふられることをやっていた記憶がある。

ー-----------

 でも結局、何にも傷つかなかった。

ー---------

 そんなに好きじゃなかったのかもしれない。

ー----------

 でも、心を動かしたのはそのあとだった。

ー----------------

 なんとなく、「感覚」はあった。

ー-----------

 わたしは、直観に優れているので、だいたいあたる。

ー-------------

「この子、オレのこと好きなんだろうな」

 その予感は当たった。

ー------------

 同じバイトの女の子で、高校生だった。

 わたしは、大学生。

ー--------------

 かわいい顔をしていたし、性格もよかった。

 なんとなく、気になっていた。

ー--------------

 あれ? なんでこいつんちにいるんだろう。

ー---------------

 気が付いたら、彼女の家にいた。

 どうして、そうなったのか、覚えていない。

 だけど、ベッドの淵を背もたれにして床に座っているわたしの上に、彼女はまたがった。

 キスをした。

ー----------------------

 わたしにとっての、はじめてのキスだった。

ー-----------

 レモンの味、なんて、しなかった。

 無色透明。

 そしてまた、「無」だった。

 ああきっと、お互いの唾液の温度が一緒だから、何も感じないんだなと、わたしは思った。

 彼女の実家だったけれど、家には誰もいなかったので、しばらくいちゃいちゃしていた。

 彼女は煙草を吸った。マイルドセブンだった。

 煙草を吸わないわたしはぼんやりとそれを見て、

「ねえ、もういっかい、したい」と求めた。

「煙草の味がするよ」と、彼女は笑った。

 ふたたび、接吻を交わす。

 すこし、苦い気がした。

ー----------------------------

 どうしてそうなった。

 わからない。

 それから数か月後のことだった。

 わたしは、夜中、彼女の家の前にいた。

 電話をかけても出ないし、メールも無視されている。

ー-----------------------

 自分が、ストーカーまがいのことをしていることも知っているけれど、「真実」を確かめたかった。

ー--------------

 少ししたら、車がやってきた。

 白い、軽自動車、

 そこには、彼女の姿と、わたしと仲の良い先輩の友人が、乗っていた。

ー-----------------------

 と、いうような記憶をたどってみた。

ー------------

 わたしにもまあ、いろいろと恋愛のエピソードは、ある。

ー-------------

 わざわざ何かを「いう」ために、静岡から大阪まで車を走らせたり、

 あるいは、東京の新宿まで迎えにいったりしたこともある。

 喧嘩したあとに、アパートの壁をよじ登って外から窓を開けさせたこともある。

ー---------------

 こう、恋愛は何か、「突き動かす何か」がある。

ー----------------

 盲目、ともいえる。

ー-------------

 そしてまた、傷つく。

ー--------------

 最近のわたしはまったく傷ついていない。

ー--------------

 たとえば、前の彼女と破局したときも、まったく傷ついていなかった。

「去るのか、まあいいや」と思っていた。

ー-------------

 いつからそんな風になったのだろう。

ー-----------------

 わからない。

ー--------------

 たくさん傷ついたから、抗体ができて、傷つかない心になったのだろうか。

ー-----------

 こころとは、なんなのか。

(ふと、夏目漱石思い出した)

ー----

「恋愛の格差」

 ここでいう格差とは、村上龍のいっていたものではなくて、

 わたしはただ単純に、「恋愛」との「格差」を感じるようになった。

ー-----------

 わたしにはもう、恋愛なんて、できないんだろうな、と。

ー-----------

 恋愛という物語の登場人物は、どこか「未完成」だ。

 もちろん、わたしが「完成」されているといいたいわけではない。

 ただ、すっかり「大人」になってしまったように思う。

 別に、浮気されたってかまわないし、別れても、追わない。

 どこか、老衰してる。

「恋愛」というものが、自分とはちがう世界の「物語」なような気がしてきた。

ー---------------

 だけど、

 まあ、

 したいなって、

 思う。

 だって、

 ロマンティックじゃない?

 恋愛って。

 な。

コメント

タイトルとURLをコピーしました