はじめに
私はあまり頭がよくありません。
特に記憶力に自信がなく、すぐに物事を忘れてしまいます。
それは読書にも言えることで、読んでもすぐに忘れてしまいます。
難しい本は理解できません。
そこで、書評を書くことにしました。
ひとつは自分のため、もうひとつは私のように本を読みたいけれど何か自分にあったいい本はないかなと探している人のため。
そんな人のために、実際に私が本を読んでみて、「これは良かった」、「これはいまいちだった」といったような感想を発信していきたいと思います。
何かの参考になれば幸いです。
『推し、燃ゆ』
書評第9冊目に選んだのは宇佐見りんさんの小説『推し、燃ゆ』です。
ずっと読みたいと思っていました。
それというのも、この小説の作者、宇佐見りんさんは静岡県の沼津市生まれだからです。
私はずいぶんと沼津市にお世話になっています。
しばらく住んでいたし、いまの職場も沼津です。
沼津の本屋さんでは、この『推し、燃ゆ』がしっかりと「推されて」いました。
読みたいな、読みたいなと思いつつ、「小説は文庫派」という私はなかなかこの本を買わずにいました。
文庫本が出るのを待っていたのです。
ところがちょっと本屋さんに立ち寄ったときに、この本を見て、「今だな」という謎の直感が働いて、(文庫本でないのにもかかわらず)買いました。
そしてその翌日に読み始め、その日のうちに読み終えました。
率直な感想は、「なるほどね」です。
小説の内容を要約するとこういったものです。
「主人公あかりには推しがいる。アイドルグループ『まざま座』のメンバーの一人、上野真幸(うえのまさき)だ。その推しが、燃えた。ファンを殴ったらしい。ままならない生活を送るなか、推しがいることだけがすべてだというあかりの心情が描かれる」
私は、「推し」という言葉がいまひとつ掴めていませんでしたが、この本を読んだことによって「なるほど」と思いました。
推しというのはそういうものか、というのが伝わってきました。
正直なところ、私はアイドルの追っかけをしている人の心理がまったく理解できません。
私にも、好きな人物やアーティストなどはいるので、分からなくもないですが、たぶんそれと「推し」は次元の違うものだと思っています。
なので、私とはまったく違う人間の心情だと思っていました。
それは、いまでも変わりません。むしろ、この小説を読むことによって、より、「別世界の人間のやることだ」と感じました。
少し本の帯に書かれていた言葉たちを載せます。
- 第164回芥川賞受賞作
- 2021年本屋大賞ノミネート
- 30万部突破
- 「未来の考古学者に見つけてほしい時代を見事に活写した傑作」
- 「うわべでも理屈でもない命のようなものが、言葉として表現されている力量に圧倒された」
- 「すごかった。ほんとに」
- 「一番新しくて古典的な、青春の物語」
- 「ドストエフスキーが20代半ばで書いた初期作品のハチャメチャさとも重なり合う」
- 「今を生きるすべての人にとって歪で、でも切実な自尊心の保ち方、を描いた物語」
- 「すべての推す人たちにとって救いの書であると同時に、絶望の書でもある本作を、わたしは強く強く推す」
- 21歳、驚異の才能、現る。
と、ある。
なんだか凄く絶賛されている。
「ドストエフスキーと重なり合うなんて凄すぎるじゃないか」と私は思った。
ここではこの本の魅力を伝えきれないと思うので、実際に読んでみることをおすすめします。
書評
総合評価:✩✩✩✩
読みやすさ:✩✩✩✩✩
没頭できる:✩✩✩✩
感動:✩
芥川賞:なんとなく納得
他の作品も読みたいか:✩✩✩
(MAX:✩✩✩✩✩)
です。
読みやすさは抜群の星5です。ほんと読みやすかった。文量もそう多くないので、3時間もあれば読み切れます。難しい熟語も出てこないし、意味の分からない単語も出てこない。
没頭できるも星4と高評価です。結構集中して読めました。なんなんでしょう。これを文才と呼ぶのでしょうか。分かりませんが、物語の世界にすっと入り込めます。
感動できるかは星ひとつ。これは感動するようなものではないような気がします。低評価という意味で付けたのではありません。「感動するようなものではないよ」というのを伝えたかったので付けました。
芥川賞。この小説は第164回芥川賞受賞作です。この書評の前回が「直木賞受賞作」だったのに対して、今回は「芥川賞」を選びました。
直木賞はいまいちよく分からないのですが、芥川賞はなんとなく知っています。
どちらかというと新人の作家に贈られるもので、小説家の登竜門のようなイメージを私は持っています。(違っていたらごめんなさい)。
他に、芥川賞を受賞した小説もいくつか読んだことがあります。
- 『太陽の季節』石原慎太郎
- 『飼育』大江健三郎
- 『忍ぶ川』三浦哲郎
- 『限りなく透明に近いブルー』村上龍
- 『海峡の光』辻仁成
- 『蹴りたい背中』綿矢りさ
- 『火花』又吉直樹
- 『コンビニ人間』村田沙耶香
です。
『推し、燃ゆ』が芥川賞に選ばれたのもなんとなくですが納得できます。
その時代の人間を映し出しているというのでしょうか。
現代はいままでにないくらい多様化している時代なので、一括りにはできませんが、『推し、燃ゆ』には間違いなく現代人が描かれています。
SNSが出てくるのも現代っぽいですね。
他の作品も読みたいかは星3。
読んでみたいですね。他の作品といってもいま出ているのはデビュー作の『かか』だけでしょうか。
読んでみたいです。
以上を踏まえて、総合評価は星4つです。なかなかの高評価です。
まとめ
小説、『推し、燃ゆ』、読みました。
おすすめですね。
なんせとっても読みやすい(そこかい!)。
怒涛なまでの文章の濁流に飲み込まれました。
帯の言葉にあったように、この小説は「すべての推す人たちにとっての救いの書」であると同時に、「絶望の書」でもあるような気がします。
どうして「救い」であり、「絶望」なのか。
それは、読んでみてのお楽しみです。
そんな感じです。
参考になりましたでしょうか。
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