書評#13『小説の神様』

書評

はじめに

 私はあまり頭がよくありません。

 特に記憶力に自信がなく、すぐに物事を忘れてしまいます。

 それは読書にも言えることで、読んでもすぐに忘れていってしまいます。

 難しい本は理解できません。

 そこで、書評を書くことにしました。

 ひとつは忘れっぽい自分のため。もうひとつは私のように読書は好きだけど何の本を読んだらいいのか分からないという人のため。

 私が実際に本を読んでみて、「これは良かった」「これはいまいちだった」といったような感想を発信したいと思います。

 何かの参考になれば幸いです。

『小説の神様』

 書評第13冊目に選んだのは『小説の神様』です。

 相沢沙呼(あいざわさこ)さんの小説です。

 私はこの本を読むまで相沢沙呼さんを知りませんでした。

 本に書かれているプロフィールによると、1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。2011年『原始人ランナウェイ』が第64回日本推理作家協会賞(短編部門)候補作となる。繊細な筆致で登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。著書に、「酉乃初の事件簿」シリーズ、「マツリカ」シリーズなどがある。

 だ、そうです。私と同い年ですね。

 この本を読もうと思ったきっかけは、ブックオフで「何かないかなー」と探していたときに、表紙が気になったのと、タイトルに惹かれたのと、裏表紙に書かれていた「あらすじ」を読んでみて、「面白そうかも」と思って買いました。

 裏表紙に書かれていた「あらすじ」はこのようになっています。

「僕は小説の主人公になり得ない人間だ。学生で作家デビューしたものの、発表した作品は酷評され売り上げも振るわない……。物語を紡ぐ意味を見失った僕の前に現れた、同い年の人気作家・小余綾詩凪(こゆるぎしいな)。二人で小説を合作するうち、僕は彼女の秘密に気がつく。彼女の言う”小説の神様”とは? そして合作の行方は? 書くことでしか進めない、不器用な僕たちの先の見えない青春!」

 です。

 読みました。

 率直な感想は「はあ!?」です。

 ちょっと言葉が悪いですが、正直になることがこの書評のモットーなので、素直に書きました。

 何が「はあ!?」なのかは書評をご覧ください。

書評

 総合評価:✩✩
 読みやすさ:✩✩✩✩✩
 面白さ:✩✩✩
 主人公の魅力:✩
 引き込まれる:✩✩
 他の作品も読みたくなる:✩
 (MAX:✩✩✩✩✩)

 です。

 読みやすさは抜群の星5。とても読みやすかったです。すんなり読めました。

 面白さは星3。少し甘く付けました。つまらなくはなかったです。ただ、面白いかなぁと言われるとちょっと迷います。めちゃくちゃ面白いわけではなかったです。でも、つまらなくもなかったです。だけど星2まではいかないかなと思って3にしました。

 主人公の魅力。星1です。

 正直に言って、この小説の主人公、千谷一也(ちたにいちや)を好きにはなれませんでした。というか、嫌いです。

 ことあるごとに「僕には小説を書けない」だとか「やめる」だとか、夢と情熱を持っている詩凪に対して「幻想だ」とか「分かってない」だとか、「これだから売れている美少女作家は」とか、「金だ金だ金だ」とか、とにかくまあうじうじうじうじうじうじうじうじしていて、読んでいて不快になった。

 彼がそのようになった理由も経緯(いきさつ)も分からないでもない。彼は彼なりに努力もしてきたし、「書きたいもの」があったのだろう。

 だけど何? 5000部しか刷られてないとか、売れていないとか、ネットでのレビューに傷ついただとか、ほんと、うじうじうじうじうじうじうじうじしていて腹が立った。

 舐めてんの? と思った。

 私だって、少なからず小説家になりたくて小説を書こうとしていた時期があったし、いまでも挑戦している。小説を書き始めて20年以上経って、デビューだってしていないのに、まだ書こうとしているのだ。

 それなのにこいつは何なんだ! 中学生で作家デビューしたにもかかわらず、売れないからだとか、評価されないからだとか、才能がないだとか、星1のレビューに傷ついただとか、正直言って、「辞めろよクソが」と思った。

 書きたくないなら書くなよテメー。作家舐めんなよ。

 どんなに酷評されようとも、どんなに売れなくともそれでも書きたいと思って、伝えたいと思って、読者を喜ばせたいと思って、周りになんと言われようとも「書く」のが作家だろう。

 ふざけんなよと思った。

 正直に言って私の大っ嫌いな「自己憐憫の塊」みたいな奴だと思った。

 もちろんそこにはまだ若いということもある。まだ高校生だ。そして繊細な心の持ち主だとも言える。だから、デビュー作は売れない小説ではあったけれど、彼にしか書けない小説を書いたのだ。それで、担当編集者や審査員や友だちの九ノ里や妹の雛子や詩凪は「心が動かされた」のだ。「あなたの小説が読みたい」と言ってくれているではないか。

 それなのにこいつはまー。

 ほんと、まったく好感が持てないばかりか大嫌いになった。むしろ、こんなやつの作品が主人公が望んでいるように「売れて」いったらもう私はこの世界さえ嫌いになるだろう。

 ひとつだけ救いがあるのなら詩凪の存在だ。

 主人公は自分とは対局にいる売れっ子作家の詩凪と共同して小説を作ることになる。そこで主人公は……(ネタバレになるのでやめよう)。

 もうね、ほんとイヤだった。この主人公は。「いいよ。うん。辞めろよ。書かなくていいよ。俺は望んでいない。書かなくていい。というかいろんな人に失礼だよ君。社会を舐めているし、他人も舐めている。小説も舐めているし、人間を舐めている。そんなに評価されない自分が可哀想? ひとりで指しゃぶって泣いていろよ。それで君が言うように学業に専念していい大学に行っていい会社に努めて妹と家族のために働けばいいよ。君が望んでいる通りにね」である。

 もういいかな批評は。それだけ私にとってこの主人公は嫌な人間だった。

 なので、星1。ゼロだっていいよ。

 引き込まれるは星2。物語に引き付ける力はそんなない。続きが気になるといったものもない。ただ、読みやすくて情景が頭の中にすっと浮かんできて、それなりに物語の世界には入れると思う。ただ、私は主人公が嫌いだったのでその情景や心情を見ているのが不快だった。

 他の作品も読みたくなる、は星1。残念だけど、魅力的な小説ではなかった。なので、これをきっかけに他の作品も読みたいとは思わなかった。

 以上を踏まえて、総合評価は星2です。

 ほんと腹立つよ! この主人公。

まとめ

 小説『小説の神様』を読みました。

 読みやすかったのは高評価です。

 ただ、主人公が私にとってとても嫌な人間だったので全体の評価が低くなりました。

 話の構造はよく分かります。主人公の性格やパートナーの詩凪との関係性などから、話の筋というものはちゃんと書けていると思います。

 でもなんだろう、「ちゃんと書けている」は、まだ私の中では高評価になりません。登場人物がほんとうに生き生きしていたら、「ちゃんと書けている」なんてことは思いません。「所詮作者の頭の中で作られたキャラクターだ」と読者が思ってしまったらその物語にのめり込むことはできません。そういった甘さがこの小説にはありました。

 正直言って悔しいです。

 私と同い年の作者。

 失礼だけど、こんな小説で本になるなんて、と、私は思いました。

「俺の方がもっといい小説が書ける」。そういう火を点けた点では高評価です。

 なんだかもの凄く酷評をしてしまったような気もしますが、これは一読者としての「正直な意見」なので、曲げるつもりはないです。

 そんなんでね、書けなくなってしまうようなら、辞めた方がいいんじゃないですか?

 相沢さんがそういう作者でないことを祈ります。

 

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