不思議なこと

雑文

はじめに

 不思議だな、と思うことがある。

 それは何かというと、「なぜわたしは小説を一本書ききることができないのか」である。

 かれこれわたしが文章を書くようになってから二十年以上は経つ。

 それなのに、まともに小説を書ききれていないのである。

 普通だったらまともな小説くらい書けるようになっているはずだし、何回か新人賞なりに応募してもいいくらいである。

 ところがわたしはそれをやっていない。

 昨年は珍しく長編の小説を書いた。

 文量としては十万字程度なので中編小説扱いだが、それでもまともな小説が書けた。それはちゃんと出版社に送ることができた。

 講評を受けて、書籍化する話も受けたのだけど、残念ながら書籍化はされていない。

 せっかく書いた「まともな」小説なので、もう何回か書き直して再度出版社に送ろうと思っています。

 今度は持ち込みじゃなくてちゃんと新人賞に送ろうかと考えています。

取り組んできたこと

 それにしても不思議である。

 わたしは、思いつきだけはすごいと自負している。

 いろんなことを思いつく。

 思いついたものをメモしていたり、あるいはすぐに取り掛かって文章にしたりする。

「お、これは面白い物語が書けそうだ」と思って書くのだけど、なぜだかそれが完成しないのである。

 なら短編はどうだろうと、短編を書いてみる。

 これはある程度はできるようになった。

 もっと切り詰めてショートショートを書いたり、あるいは原稿用紙一枚物語というものをやってみたこともある。

 他にもいろいろなことをやってきた。

  • 好きなマンガをノベライズした
  • 有名な作品を模写した
  • 一行の文から細かく分けていって物語を作ろうとした
  • プロットを書いた
  • 執筆関連の本を読んだ
  • マンガ、アニメの構成を読み解くことをした

 などなど。執筆に関することはいろいろやってきた。そういえば書評みたいなこともやっていたな。

 なのにわたしはまともな小説が書けないのである。

不思議なこと

 最近読んだ「物語の書き方」的な本のなかでこんなものがあった。

 それは物語のテンプレートだった。

 詳しくは書かないけど、「ねえ、これってヒロアカじゃん」とわたしは思った。

 アニメ『僕のヒーローアカデミア』の構成だった。

 実は、小説(特にエンタメ小説)にはテンプレートというものがある。

 ご丁寧にそれが本で売られていたり、電子書籍でタダで読めたりする。

「じゃあこれに当てはめれば物語を作るのなんて簡単じゃん」と思う。

 わたしもそう思う。

 だけどそれができないのだ。

 なぜだろう。

 これが本当に不思議なのだ。

 当てはめればいいだけなのだ。誰でもできそうなものである。なのに、それが出来ないのだ

 不思議だ。

気がついたこと

 じゃあ逆になぜわたしは昨年長い小説を書けたのだろう。

 そこに成功のヒントがありそうだ。

 振り返ってみれば、あれはもともとは短編を書くはずだった。

「アイドルの推しが脱退したらファンはどうするだろう」という小さな話を書く予定だった。

 ところが意外にも筆は進み、キャラも増えて、キャラに深みを持たせていけばいくほどあとは勝手に物語が進んでいったのだ。

 物書きをしているとまれにこういうことがある。

 キャラクターが勝手に動いていくのだ。

 これは作家にしかわからないことだけど、その感覚は非常に楽しい。

 作っている、創作しているという感覚はなくて、ただその世界を描いているのだ。

 実はこの作品でわたしはプロットというものをほとんど書いていない。あるエピソードを書くと、自然に次のエピソードなり事件なりが出てきて、それを文章として表していっただけなのだ。

 そういえば湊かなえさんは小説を書く前に徹底的に登場人物を作り上げるそうだ。

 わたしの場合、作品を書きながらだったけれど、登場人物をかなり細かく設定した。

 そこが今回ちゃんと実を結んだのかもしれない。

 ただし、気がついたことがあった。

 それは、「無知だと何も書けない」ということだった。

 今回わたしははじめてミステリー色のある作品を書いた。

 そこには日本の法律やら警察の動きやら探偵の仕事なりが出てくるのだがわたしはほとんど知らなかった。

 だから泥縄式に調べて書き進んでいったのだが、もしかしたらテンプレートがあっても人が(あるいはわたしが)小説を書けないのはそこなんじゃないかなと気がついた。

 結局のところ話の構成が出来ていて、作り方も分かっていても知識がないと小説は書けないということなのだろう。

 料理と同じなのかもしれない。

 日本人なら日本語で書かれた料理のレシピなら読めるだろう。

 だけど、「大さじ」「小さじ」が分かっていなかったら分量がめちゃくちゃになるし、

 たとえばペペロンチーノで使われる「乳化」という意味も知らないとそれができない。

 火加減や具材を入れるタイミングも分かっていないとちゃんとした料理ができない。

 読めるから、分かるから出来るというものではないのだ。

 なるほど。

まとめ

 不思議だなと思っていたけれどこの記事を書きながら自分で納得してしまった。

 つまりわたしはまだまだ勉強不足なのである。

 だけど昨年の作品を作れたおかげで何かを掴んだという感覚はある。

 現在新作を書いて、三万字くらい書いたけど早速躓いた。

 たぶんこの作品は書ききれないだろう。感覚的にわかる。

 作家にはタイプがわかれるそうだ。

 しっかりプロットを練るタイプ。まったくプロットを書かないタイプ。キャラ設定するタイプとしないタイプ。理詰めの話、感覚の話。描写が魅力的なタイプや文体が独特なタイプ。

 わたしはいったいどのタイプに分かれるのかはまだわからないが、自分の得意なものを見つけることができればこの先成長できると思う。

 がんばろう。

 

 

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