書評#4『愛と幻想のファシズム』

書評

はじめに

 私はあまり頭がよくありません。

 特に記憶力に自信がなく、読んだ本もすぐに忘れてしまいます。

 難しい本は、理解できません。

 それでも本を読むことは好きです。

 ジャンルは様々です。

 小説、エッセイ、ビジネス書、自己啓発本、実用書などなど。

 私のように、読書は苦手だけど本を読みたい人は多いのではないでしょうか。

 そんな人のために、書評を書くことにしました。

 もちろん自分のためでもあります。

 私が読んでみて、「これはよかった」「これはいまいちだった」というような感想を発信したいと思います。

 何かの参考になれば幸いです。

『愛と幻想のファシズム』

 書評第4冊目は『愛と幻想のファシズム』です。

 村上龍さんの小説です。政治経済小説と書かれています。

 私は、村上龍さんのファンです。熱狂的なファンというわけではないのですが、いくつか読んでいます。

 ぱっと思いつくのは『限りなく透明に近いブルー』『コインロッカーベイビーズ』『ラブ&ポップ』『テニスボーイの憂鬱』『五分後の世界』『69』『すべての男は消耗品である』といったところです。

 村上龍さんの小説を読むと元気が出ます。

 描写が好きだったり、言葉にならない想いを言葉にしてくれていたり、カタルシスを得たり、あるいは読了後に見る世界が変わっていたり、刺激的な小説やエッセイを書いてくれます。

 『愛と幻想のファシズム』これを読むのは2回目です。

 はじめて読んだときの印象が強くて、また読みたいと思ったのです。

 ところが、読んでみるととても苦労しました。

 難しい(;´Д`)!

 いったい何を言っているのか分からない。

 思うように感情移入できないし、情景を想像することも困難でした。

 「こんなんだっけ?」と首をかしげました。

 『コインロッカーベイビーズ』や『五分後の世界』、『69』などはすらすら読めたのに、この作品はまったくすらすら読めない。

 難しい。

 たとえばIMF。IMFは国際通貨基金だったと記憶しているが、その、「国際通貨基金」が何を意味するのかが分からなくて、文章を読み取れなかったりする。

 私は経済に詳しくないし、政治もまったく詳しくない。

 物語の中で、国や組織が動くのだが、「なぜそう動くのか」が分からない。

 日本語を読んでいるのに、まったく理解できないのである。

 はじめは分からない単語を調べて読みすすめていたが、だんだん面倒になってやめた。

 上巻はまだよかったが、下巻の後半が特に読み進めるのが難しかった。

 苦痛とも言える。

 村上龍さんの頭の中が分からなかった。

 きっとものすごい勉強したんだなということが窺えた。

 あとがきに書いてあるが、数百冊も参考文献に当たったらしい。

 凄い。

 本を読むことができるのと、その本の内容を理解するのでは大きく違う。

 村上龍さんは、ちゃんと経済のことや国のことを理解しているのだ。

 凄い。

 私が村上龍さんを好きな理由のひとつに、「有名大学卒でない」ことが挙げられる。

 美術大学を中退である。

 私は学歴コンプレックスがあるわけではないが、本を読んだり、結果を残している人たちを見ると、「やっぱり頭がいいから出来るんだ」「僕にはムリなんだ」と思ってしまうところがある。

 そういう意味で言えば、村上龍さんは私にとってヒーローだ。

 そんな村上龍さんがとんでもない小説を書いていた。

 何度も言うけど、難しい。

 登場人物のキャラクターは好きである。

 鈴原冬二、ゼロ、フルーツ。よく書かれている。あとがきに、この3人は『コインロッカーベイビーズ』のキク、ハシ、アネモネの生まれかわりであると書かれているが、なるほどと頷ける。

 もう一度読みたいとは思わないが、読んでよかった小説ではある。

 特に若者にはいいんじゃないかな。

あらすじ

 とても複雑に話が絡まりあっているのであらすじを書くのは難しいのですが、私が書くとこうなります。

「狩猟家である鈴原冬二がゼロと出会い、政治結社を作る。その名も『狩猟社』だ。カリスマである鈴原冬二に人々が集まり、次第にその力を強めていく、日本を革命に導き、世界と戦っていく物語」

 だめだ。

 でも私が書けるとしたらこれくらいしか書けない。「革命」という言葉が合っているのかどうかもわからない。

 ちゃんと読み取れた人はもっとマシな「あらすじ」を書けるのかもしれないが、私はこれで限界です。

書評

 総合評価:✩✩✩
 読みやすさ:✩✩
 面白さ:✩✩✩✩
 刺激的:✩✩✩✩✩
 カタルシス:✩✩✩✩
 (MAX:✩✩✩✩✩)

 はっきりいって読みにくい。経済や政治に詳しい人が読んだら違うのかもしれないが、私にとっては非常に読みにくかった。なので、読みやすさは星2つです。

 面白さは星4つ。村上龍さんらしい話の展開に舌を巻きます。

 刺激的でもありました。「政治なんて、誰がやったって同じだ」と思っている人にはとても刺激のある物語だと思います。

 国を変えるためには、選挙に出て、有権者から票をもらって、政界に出て、というような一般常識が覆ります。

 「政治結社」なんて出来るんだ。政権を取ることも出来るんだ。世界と戦うことも出来るんだ。そういうことを思わせてくれる小説です。

 カタルシス。カタルシスの意味をあまり理解していない私ですが、「無力な私の代わりに物語の主人公がスカッとさせてくれる」という意味では、この小説はカタルシスを得ることが出来る小説だと思います。

 星、5にしておきました。

 総合評価は星3つです。星2つにしようかどうか悩みました。

 なんせ読みにくい。

 でも、おおむね読んだあとの印象がよかったし、読みにくいのは読者である私の理解力の低さや知識のなさによるものなので作品としてはとてもいいものだと思います。

 以上です。

まとめ

 何度も言うけど、非常に読みにくい小説でした。

 苦痛でもありました。

 でもとても、村上龍さんらしい小説でした。

 政治や経済に興味のある方には必見の本です。

 それにしても、いったい村上龍さんはどうやって勉強したんだろう。

 そういえばエッセイで、『だまされないために、わたしは経済を学んだ』とかいうのがあったような気もする。

 読んだけど、覚えていない。

 『愛と幻想のファシズム』、私にとっては読みにくい小説でしたが、あなたにとってはどうでしょう。

 一度手に取って読んでみてください。

 おわり。

 

 

 

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