綱渡り

雑文

 まったく。祝日なんて嫌いだ。

 学生時代が終われば、土日や祝日とはまったく関係のない生活をしている。

 カレンダーが赤くなってたってなんにも嬉しくない。

 むしろ嫌だ。大抵そういう日は働いているし、大抵そういう日は混むからだ。

 僕は忙しいのがイヤなのである。

 今日も多分人が少ないんだろうなと思っていたが実際そうだった。

 土日祝日なら6人はいてほしかったが4人だった。

 マネージャーと準社員のえりさんと晴美さんと僕。

 うう、である。

 出勤して驚いた。デシャップにはシルバーが山積みだった。

 マネージャーの話によると、昨日のディナーは鬼のように混雑していたらしい。

 それで片付けが間に合わず、朝になってもシルバーがそのままなのだそうだ。

 オープンまでに片付くのかなと思いながらとりあえず布巾で拭いた。

 今日はこの前の日曜日と同じようにデシャップでよいみたいでほっとした。

 ランチはともかく、グランドメニューのオーダーは不安しかない。

 ただ、人が少ないので恐いなと思っていた。予約もびっしりである。

 不安を持ちながら開店した。

 それから綱渡りのような時間を過ごした。

 めちゃめちゃ忙しいわけではなかったが、満席になっていたし、ウェイティングも常にあった。

 お皿を割ってしまったのは何時だったのだろう。覚えていない。

 いままでお皿を割ることなんてなかったのに油断をしてしまったのか2枚重ねて持っていた取り皿を落としてしまったのだ。

 大きな音がして咄嗟に「失礼しました!」と謝った。

 後ろに居た準社員のえりさんが近くのテーブルのお客様に「お怪我はありませんか?」と言ってくれていた。それを聞いて僕はもう一度謝った。

 えりさんがテキパキとした動きでホウキとチリトリを持ってきてくれて片付けてくれた。

 僕の手にはまだ料理が乗っかっていたのでそれを別のテーブルへ提供してからデシャップへ戻った。

 お皿を割ってしまったときにやることをえりさんが教えてくれた。

 表に記入し、新聞紙にくるんで所定のゴミ箱に入れる。

 叱られはしなかった。

 そういえば今日は怒られていない。

 昨日に引き続き、今日もだ。珍しい。

 気が付けば3時になっていて、晴美さんが休憩に入った。

 ラストオーダーも終わったのであとは片付けだけである。

 今日も、ゴリさんがデシャップを片付けてくれていたのですんごく助かっている。

 4時までのあいだに概ね片付けは終わった。

 上がる。

 控え室に行くとマネージャーと晴美さんがいた。

 僕が鼻をすすっていたので、「コロナにでもなったの?」と晴美さんが聞いてきた。

 もちろん冗談であるが、「そうなんですよ」なんて乗ることもできずに「いえいえ」と首を振った。

 帰り支度をして、煙草に火をつける。

「しょうさんはアニメとか見ます?」とマネージャーが聞いてきた。

「見ないっすねえ。見たいですけど。昔は見てました」

「コロナだから見れないんだよ」と晴美さんが言う。

「関係なくないっすか!?」と僕は思わず突っ込んだ。ちょっと面白かった。

 マネージャーが話に乗ってくる。

 なんだか昨日から晴美さんは僕に絡んでくる。非常に反応に困る。

 だけど、もしかしたら少しは僕のことを認めてくれるようになったのだろうか。

 何かを聞いたりして教えてくれるときも、あまりキツイ言い方をしなくなった。

 そして、怒られていない。

 油断は出来ないが、良いことである。

 今日もマネージャーと晴美さんの空いたお皿を持っていった。「ありがとう」と言ってくれた。

 挨拶をしてお店を出る。

 今日はこのあとに「もみ」の仕事がある。

 疲れたし、出来れば入らないでいたいなと思っていたけれど、ばっちりご予約が入っていた。

 セットなのでまあ良かった。セットは好きだ。

 75分のセットのコースを1本やって終了。

 これで今日の仕事は終わりである。

 コンビニに寄る。

 今日は笹原さんは居ない。

 さくっと缶コーヒーと煙草を買って帰った。

 明日明後日は僕はお休みなので笹原さんには会えない。

 もしかしたら土曜日も会えないのかもしれないので4日間は会えないのだ。

 だけどこの空白の時間が大切なのである。

 ここ最近はずっと「攻めて」いた。

 なのでちょっと休息が必要なのである。

 もしかしたらこの会えない時間のあいだに笹原さんは僕のことを考えてくれるかもしれない。

 間違いなく顔と名前は覚えてもらった。

 顔と名前を覚えてもらった上に、他の情報もインプットされているはずだ。

 好意を持たれている。食事に誘われた。手紙を書いてくれた。バレンタインデーにチョコをくれた。挨拶をしてくれる。など。

 いろんなお客さんを相手にしていると思うけれど、ここまでのことをするお客さんは非常に少ないと思う。

 笹原さんは可愛いので、他にもお客さんから話しかけられているはずだ。その、いろんな軟派な人たちとは差別化を図らなくてはならない。

 そのため、僕は紳士であることを心がけている。

 笑うな!

 自己分析するに、いまのところ悪い印象は持たれていないみたいだ。(多分)。

 これからしばらくは「何もしない」作戦をする。

 何もしない作戦とは、何もしないことによって、「なんか気になるぅ」と思わせる作戦でもある。

 話したいことや聞きたいことは山ほどあるが、それを抑える自制心が必要な過酷な作戦なのである。

 そしてまた、「冷静と情熱のあいだ」作戦も行っていく。

 いつかデートするんだー! らんらん♪

 今日はなんか文章が適当ですみません。ちょっと疲れているのかも。

 おやすみー。

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