予測不能な物語

雑文

 朝目が覚めたら母親がチーズになっていた。

 アパートの前には駐車場があって、その前に道がある。その道の上に母親は横たわっていて、チーズになっていた。

 チーズはすっかりカビてしまっていて、その青さが母親がもう生きては帰ってこないことを物語っていた。

 私は泣きながら父親に相談してみた。

 父親は「仕方がない」と言って現状を受け入れていた。

 それが、私の最古の夢の記憶である。

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 私は毎日夢を見る。

 忘れてしまうことが多いけれど、毎日見ることは確かだ。

 他の人の夢事情を聞くと、毎日見ないとか、白黒だとかいうのがあるけれど、私は毎日夢を見るし、すべてカラーだ。音も聞こえるし、自分もしゃべる。味も分かるし匂いも感じる。現実世界と何ら変わりない。

 夢というのは不思議な世界で、どんなにはちゃめちゃな設定でも受け入れている自分がいたりする。

 リアルではとうに忘れていた人が出てきたり、現実では会ったこともなければ見たことも聞いたこともない人が自分の知り合いとして出てきたりする。

 場面がコロコロ変わることも多い。

 昨日見た夢も、はちゃめちゃで、コロコロ場面が変わっていた。

 断片的にしか覚えていないが、こんな感じの夢だった。

  • 冬に実ったスイカ畑を写真で撮り、Twitterにあげようとする。
  • 成人祝いに袴を着させてもらう予定だったがその袴をおじいちゃんが着ていてどうしようもないなと思う。
  • 街を案内していて、女子学生たちと交流を持つ、何故かそこにヤンキーといじめられっこが何かをしている現場に立ち寄り、喧嘩をしようかどうか迷う。
  • ライブハウスでLUNA SEAのコピーバンドの手伝いをする。
  • いつの間にか自分はギターを担当していて、自分のシールドを人に貸す。
  • シールドをスピーカーなどに出鱈目につないでいる人が、「シールドってこういう風につなぐもんだ」とかなんか言いながら感電している。
  • うんこをしたいと思い和式便所に行くものの、その便器の上にはケースに入った誰かのギターが置かれていて、「どかさないと」と思うものの、素手で触ると「指紋がつく」と心配してトイレットペーパーを巻き取って証拠を残さないようにする。
  • そろそろ煙草を吸いたいと思い、出歩く。
  • 業務スーパーの中を歩いてインスタント麺などを眺める。
  • 陳列棚の中に「スパイス」のコーナーがあって、珍しいスパイスや唐辛子の粉末を見て「何かに使えそうだ」と検分する。
  • 箱の中に入った「粉」に手を入れてマゼマゼしていると、店長らしき人がやってきてぶつくさ言い、私はその場を離れるが、それが「覚せい剤」であることを知っていて、証拠を隠滅せねばを思い、自分の靴下で拭い取り、その靴下を外に放り投げようとするが、自分が居るのは海に浮かぶ客船で、ドアを開けると暗い海が広がっていて、そこに丸めた靴下を投げて水面に落ちるのを確認する。
  • ライブハウスから家に帰りたいと思っていたが自分のギターを忘れたことに気づき、楽屋に戻って探す、スタッフらしき女の子が一緒に探してくれて見つけることができる。
  • 一緒にギターを探してくれた女の子と一緒に帰る。同じ方面であることを知り、彼女の電車賃を私が払うことが決まる。
  • 駅の券売機で切符を買う。私が「清水駅」で、彼女が「草薙駅」だった。
  • なかなかうまく切符を買うことができず、電車に乗り遅れそうになるが、電車は私を待ってくれている。
  • 電車に乗り込む。電車はそこそこ混んでいて、私も女の子も立つ。
  • 正面に立っている女の子が私にキスをせがんでくるが、彼女が嘔吐したばかりだということを知っていて、「あんまりキスはしたくないな」と思う。
  • 女の子の頬に浮かぶそばかすを眺める。

 以上。これが昨日見た夢だ。

 昨日と言っているがだいたいが目が覚める前に見ているので実際は今日の朝である。

 短い時間でよくこれだけのものを見るなと思う。

 この私の夢の内容を読んでみてどう思われただろうか。

 はちゃめちゃだろうと思う。

 現実ではそんなにアクシデントというものはないのだが、夢の世界だとだいたい何かに困ったりうまくいかなかったりハプニングが起こったりしている。

 なので私は面白い。

 小学生のころに、「好きな人の写真を枕の下に入れるとその人の夢を見ることができる」という裏技を知った。

 写真を持っていなかったので、その試みはできなかったけれど、高校生のころは雑誌から切り取ったヌード写真を枕の下に入れたりしていた。

 ほとんどが失敗に終わったけれど、ごくごく稀にえっちな夢を見る。

 男性に向けたアンケートで、「いままで夢精をしたことがあるか」という結果、ほとんどの男性が「夢精」をしたことがあるらしい。

 私もある。

 いまはないが、「サカリ」のついていたころはほんとにごく稀に見ていた。

 不思議なことに、夢精は、現実の射精より気持ちがいい。

 そして現実ではありえないような女の子の淫らな姿を見ることもできたりする。

 そういう夢を見たときは「ラッキーだ」と思う。

 いまも、私はえっちな夢を見たいので、寝る前には必ず「エロ画像」を眺めるようにしている。

 成功はしていない。

 夢で面白いなと思ったのは映画『ドラえもんのび太の夢幻三剣士』である。

 とても面白い内容だし、夢もあるので子どもたちに見せたい。

 子どもだった私はテレビで放映されたのをビデオに録画して何度も観た。原作の漫画も買って読んでいた。

 細かい内容は忘れてしまったけれど、ハラハラしたことだけは覚えている。

 他に、夢を題材にした作品として思い浮かぶのは村上春樹さんの小説『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』である。

 たしかそれだ。もしかしたら他の作品とごっちゃになっているかもしれないけれど、たしか、それだと思う。

 この小説は、二つの物語が並行して進んでいく形を取っている。

 ひとつは影を切られた主人公がその街で「夢読み」の仕事を任されて毎日図書館に通い、一角獣の頭蓋骨から人々の「夢」を見るというもの。

 もうひとつは「計算士」という暗号を処理する特殊な仕事をする主人公がそれに敵対する「記号士」からの攻撃を受け、なんだかすったもんだするお話で、自分に届けられた箱の中に一角獣の頭蓋骨を発見しそれが何かを探ったりする複雑な話。

 非常に面白い。

 そのなかで、博士が発明したシステムがある。

 人間が見る夢の電気信号を解析し、ビジュアル化することでアウトプットすることができる、というものだ。

 たしかそんなものだ。

「すげー」と思った。

 そしたら私が見るえっちな夢も録画したいと思った。

 なんだか私は「えっちなこと」しか考えていないようだが、実際そうなのでまあいいだろう。

 と、まあ、夢というものは面白い。

 ときどき私は意味深な夢を見る。

 例えばこんな夢。

 その夢の中では人々が毎日同じ作業をしている。そのことを当たり前だと思っていて、何の疑問も持っていない。だが、私だけが疑問を持っていた。

「みんな洗脳されているんだ」と私は言うが、誰も相手にしてはくれない。

 人々は「上層部」の人間によって洗脳され搾取されているのだ。その世界はそういうシステムによってなりたっている。

 私が「世界の秘密」に気づいてしまったことを「上層部」に気づかれ、私は狙われる。

 できれば仲間を連れて行きたかったが誰も私の言うことなど聞いてはくれなかったので仕方がなしに私だけがそこから逃げようとする。

 そんなお話。

 他には、「異次元列車」という夢が面白かった。

 私は「観察者」という仕事に就いていた。観察者は異次元の世界を「見る」という仕事だ。

 その日の私は走る列車の中を観察するというものだった。

 その列車は、「神隠しにあった人たち」が集められている。

 神隠しにあった人たちはあるゲームの参加者でもあった。

 そのゲームは、次に止まる駅で一番最初に列車から出たものだけが現実世界に戻れるというものだった。

 設定としては、乗客はみな記憶と理性を失っていて、機械のように、情景に溶け込むエキストラのように存在していた。

 だけどそのなかの数人は理性と記憶を取り戻し、現実世界へと戻ろうとする。

 だけど、「ひとり」しか外に出られないので、列車の中で「騙し合い」が始まる。

 平和に見えた列車の中で、じりじりとせめぎあいがはじまる。

 理性の皮を被っていた人間はその皮を破り、「本能」丸出しの生き物と化す。

 その形態はさまざまで、獣になる物もいれば、モンスターになる物もいた。それぞれの人間の内に秘められた一番大きな「欲求」が具現化されはじめる。

 誰かは誰かを殺し、誰かは乗客の頭を噛み砕いて食べる。血飛沫が窓ガラスに赤黒く飛び散るのを私は冷静に観察する。

 理性での騙し合いに耐えられなくなった「目覚めた乗客たち」は己が外に出たいがために他人を攻撃していく。

 列車の中が惨劇になり、血や内臓があたり一面に広がっていく。

 その中で、スーツと着た綺麗な若い女性が私が「観察者」であることを察したことに気づく。

 そして彼女が私に目線だけで助けを求めてくるが、観察者の仕事は「見る」ことだけで、その世界に介入してはならないというルールがあるので私は何も手を出さないでいる。

 出さないでいるが、その女性があまりにも綺麗で、不憫で、現実世界での人間性も何故だか私は知っていて助けたいと思う。

 彼女を救うか、ルールに従うか。

 ルールを破ったら私は罰を食らうだろう。

 そういう葛藤を抱きながら、列車は進んでいく。

 という夢だ。

 なんだか長くなってしまったな。

 そろそろ終わろう。

 二つの夢が意味するものは、「世界の秘密」なのだと思う。

 ある種の哲学だ。

 映画『マトリックス』のようでもある。

 普段の我々は日常を何の疑問もなく生きているが、そこには隠された秘密があるのかもしれない。

 夢の世界では、はちゃめちゃな設定でもそれを受け入れているように、我々もこの世界で何の疑問も持たずに生かされているのかもしれない。

 信じるものは救われる。

 その言葉の裏には、真実を暴こうとする者には罰が与えられると読めなくもない。

 まあ、知らんけど。

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